お斎(おとき)とは?施主・参列者それぞれの基本マナーも徹底解説!
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法事・法要の場では日常生活で使われない言葉が頻出し、「お斎(おとき)」もその1つです。お斎という言葉を初めて聞く方や、法要に参列した経験があっても意味をきちんと理解していない方も多いのではないでしょうか。
お斎を簡単に説明すると「会食」で、法要後にはお斎を行うという慣習になっています。お斎では施主・参列者ともにマナーがあるため、自分の立場に合うマナーを身に着けましょう。
今回は法要後に行われるお斎とは何かを説明した上で、施主・参列者それぞれの基本マナーを解説します。
目次
1. お斎(おとき)とは?
お斎(おとき)とは、法要の後に行われる会食の席のことです。
もともとは仏教用語の「斎食」から生まれた言葉で、決まった時間にとる食事を指します。現在では法要後の会食という意味で使われることが多くなっています。
お斎は、法要を行った施主が、お坊さんや参列者の方への感謝の気持ちを表すために行います。食事をしながら故人の思い出話をするなど、参列者の方たちに故人を偲べる場を提供することもお斎を設ける目的の1つです。
また、法要では必ずしもお斎を設ける必要があるわけではなく、近年はお斎のない法要も増えています。お斎を設けない場合は、施主の方があらかじめ法要の案内時に伝えておくとよいでしょう。
1-1. お斎と通夜振る舞い・精進落としの違い
お斎と意味がよく似ている言葉に「通夜振る舞い」「精進落とし」があります。
通夜振る舞いとは、通夜の後に設ける会食のことです。通夜振る舞いは、通夜に来てくれたお坊さんや参列者への感謝を表すとともに、故人を偲ぶ意味もあります。
もう1つの精進落としは、火葬や初七日法要の後に設けられる会食です。
もともとは故人の亡くなった日から四十九日目までは精進料理を食べて、四十九日を過ぎた後に通常の食事に戻すという慣習に沿って行われていました。現在では葬儀の苦労を労い、通常の生活に戻す区切りとして精進落としを行うという意味合いがあります。
通夜振る舞いと精進落としはどちらも法要の後に設けられる会食であり、お斎の一種です。通夜振る舞いは通夜の後のお斎、精進落としは火葬や初七日法要の後のお斎として、使い分けましょう。
2. 【施主向け】お斎の席における基本マナー
法要の後に行われるお斎にはさまざまなマナーが存在します。お斎を用意する側である施主の方はお斎のマナーをしっかりと理解して、会場や料理の用意から当日の対応までを行えるようにしましょう。
以下では、施主が知っておきたいお斎の席における基本マナーを6つ紹介します。
2-1. 会場について
お斎の会場はなるべく移動を少なく済ませられるよう、法要を執り行う会場と近い場所を選びます。法要会場が葬儀場や寺院であれば専用の部屋、自宅であれば広間や近くの料亭・レストランを使うとよいでしょう。
法要会場とお斎の会場の距離が離れている場合は、送迎の有無を確認することがおすすめです。特に高齢の方は途中の移動が負担になりやすいため、参列者に高齢者がいる場合は送迎がある会場を選んでください。
2-2. 料理内容について
従来、お斎の料理内容は精進料理であることがほとんどでした。
しかし、近年はお斎のあり方が変化しており、肉や魚を使った料理を出すケースも増えています。特に精進落としは通常の食事に戻す意味があるため、精進料理にこだわる必要は薄いでしょう。
:ただし、年配の方はお斎で肉や魚が出されることを嫌がる方もいます。高齢者の親族がいる場合は、あらかじめ確認をしておくことが大切です。
また、お斎は法要に関係して出される料理であるため、鯛や伊勢海老のように慶事向きの料理・食材を使うことは避けるべきと言えます。
お斎を含む法事の会食では、陰膳(かげぜん)を用意することもあります。陰膳とは、古くから行われてきた仏教の風習であり、「故人」や「遠く離れた場所で暮らす家族」など、その場にいない人のために用意する食事のセットです。
陰膳は法要後の会食において必ず用意しなければならないという明確な定めはないものの、基本的に四十九日までの法事では多くの方が陰膳を用意する傾向にあります。この四十九日までの法事における陰膳では、陰膳用の食器(仏前椀)やその配置・並べ方にも決まりがあります。なお、料理内容は一汁三菜をベースとした精進料理と大きな違いはありません。
また、一周忌や三回忌といった年忌法要でも、「故人とともに食事を楽しむ」「故人のお膳を囲み、集まった方同士で思い出を語り合いながら和やかな時間を過ごす」という意味を込めて陰膳を用意するケースもあります。
2-3. 席次・席順について
お斎の会場には一般的に故人の遺影と位牌を飾ります。故人の遺影・位牌と近い席が上座、遠い席が下座です。
故人と最も近い上座にはお坊さんに座ってもらい、次に施主や遺族の代表者が座ります。続いて親族の年長者にあたる方、参列者の方と座り、残りの親族は末座に座りましょう。
なお、お斎が親族のみの場合は、お坊さんと施主や遺族の代表者が上座に座る以外は、席次・席順に細かくこだわる必要はないともされています。
また、地域や家筋によってはお斎の席次・席順が異なるケースもあります。分からない場合は地域や親族で詳しい方に尋ねることがおすすめです。
2-4. 乾杯(献杯)・挨拶について
お斎を始める時には、乾杯(献杯)と挨拶を行います。献杯とは、故人への敬意を表すために杯を捧げることです。
献杯をするときは、最初に故人の位牌にお酒の入った杯を捧げてから、参列者全員にそれぞれ杯を持ってもらいます。その後は献杯の挨拶を行い、最後に「献杯」と言って杯を軽く上げる流れです。
献杯の挨拶は、1分程度にまとめることがマナーです。献杯を「乾杯」と言い間違えたり、杯を打ち合わせたりしないようにも注意しましょう。
2-5. 返礼品について
お斎に参加したお坊さんと参列者の方には、返礼品を渡します。返礼品を渡すタイミングは、全員の食事が終わってお開きの時刻が近づいた頃です。
返礼品は直接渡すのではなく、参列者の席の横に置きます。最初にお坊さんに返礼品を渡してから、席次・席順に沿って渡していくとよいでしょう。
返礼品はお菓子・お茶といった消え物や、洗剤・タオルなどの日用品がよいとされています。昆布や鰹節のような縁起物や、金券などの金額がそのまま分かる品は返礼品にふさわしくないため注意してください。
2-6. お斎料・御膳料について
お斎料とはお斎にかかる費用のことで、お斎の会場に対して支払う飲食費や施設料金を指します。お斎料の相場は利用する施設や地域によって差があるものの、3,000円~1万円程度が相場です。
また、法要を行ったお坊さんがお斎を欠席する場合は、食事の代わりとして「御膳料」を渡します。御膳料はお布施とは別の封筒に包み、「御膳料」や「御膳代」と表書きします。その上で、お布施の下に重ねてお坊さんに渡すことがマナーです。
3. 【参列者向け】お斎の席における基本マナー
お斎の席におけるマナーは、お斎に参加する参列者のほうにもあります。親族が多い方や人付き合いが多い方はお斎に参加する機会も多くなるため、最低限の基本マナーを押さえましょう。
お斎に参加する参列者の方向けに、お斎の席における3つの基本マナーを紹介します。
3-1. 服装について
お斎に参加する際の服装は、法要のときに着ていた服装のままが一般的です。
法要のときの服装が窮屈だったり、食事の邪魔になったりする場合は、平服に着替えても問題ありません。スーツの場合は上着を脱いだり、ネクタイを外したりしてもよいでしょう。
ただし、お斎の会場が格式の高い料亭などの場合は、法要のときの服装をなるべく崩さないほうがよいと言われています。あらかじめお斎の会場がどこかを確認して、法要で着る服装を決めることがおすすめです。
3-2. 出欠連絡について
お斎がある法要では基本的に、法要の案内状にお斎の参加の有無が添えられています。お斎の会場や料理は参加者の人数を踏まえた上で施主が予約するため、参列者の方はお斎の出欠連絡をできる限り早い段階で伝えましょう。
もしもお斎に参加すると書いたものの、事情により参加できなくなった場合は、なるべく早く施主に欠席の連絡をしてください。
3-3. お斎料・香典について
お斎の飲食費などを指すお斎料は、施主が支払うお金です。
しかし実際には施主の負担とならないよう、参列者の方はお斎料を上乗せした金額を香典に包むことがマナーとされています。法要の後にお斎がある場合の香典は、一般的に約1万~3万円が相場です。
ただし、香典の金額や上乗せする金額は、故人・施主との関係性や地域によって違いがあります。香典にいくら包めばよいか分からない場合は、他の親族や参列者の方に尋ねる方法もあります。
まとめ
お斎とは、法要後に行われる会食のことです。一周忌や三回忌といった年忌法要の後はもちろん、通夜の後には通夜振る舞い、火葬や初七日法要の後には精進落としという呼び方でお斎が行われます。
お斎のマナーは、施主側か参列者側かによって違いがあります。施主の方はお斎の会場や料理の準備と当日の進行などについて、参列者の方は服装や出欠連絡・香典についてのマナーを確認しておきましょう。
マナーへの不安がなくなることで、故人を偲ぶ気持ちを持ってお斎に参加できます。