身寄りがない人の死後手続き|起こり得る問題や生前にできる準備も
この記事を書いた人
近年、家族の在り方や個人の価値観の多様化が進んでいます。「家族や親族がいない」「親族との関係が断絶している」など、頼れる身寄りのない人は増加傾向にあります。身寄りがない高齢者の中には、死後の手続きに不安を感じている人も少なくありません。
今回は、いざというときに頼れる身寄りがない人の死亡手続きの流れや死亡した場合に起こり得る葬儀・納骨・相続に関する問題について詳しく解説します。生前にできる準備も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 【2018年~2021年】身寄りがない人の死亡者数
総務省が2018年4月から2021年10月までの3年半の期間を対象に行った調査によると、身寄りがない人の死亡件数は105,773件となっています。
(出典:総務省「遺留金等に関する実態調査」/https://www.soumu.go.jp/main_content/000870888.pdf)
家族の在り方や価値観の多様化が進む中、近年ではあえて生涯独身の「おひとりさま」を選択する人も多く見られます。
そもそも「身寄りがない」とは、家族や親族が1人もいないという状況のみを指しているのではありません。兄弟や甥姪はいるという場合は身寄りがあると考える方もいますが、「迷惑は掛けられない」「仲は悪くないけど長いこと会っていない」などのさまざまな事情で疎遠になっている場合は身寄りがないという状況に該当します。
また、たとえ配偶者や子どもがいる人でも、自身の最期に必ず身寄りがいる確証はありません。将来、何らかの理由でいざというときに頼れる身寄りがいなくなる可能性は誰にでもあります。決して他人事ではないため、死後に起こり得る問題や生前にできることを知っておくことは大切です。
2. 【ケース別】身寄りがない人の死後手続きの流れ
いざというときに頼れる身寄りがない人が死亡した場合、自宅・病院・外出先など死亡した場所によって必要な手続きが変わります。死後にどのような手続きが必要になるのか、把握しておきましょう。
ここでは、身寄りがない人の死亡手続きの流れについてケース別に解説します。
2-1. 自宅で亡くなった場合
身寄りがない人が自宅で亡くなった場合、発見した人が警察に通報します。身寄りがない人は体調の変化に気付いてくれる人がそばにいないため、遺体の発見が遅れやすいのが特徴です。
警察が現場を確認し、事件性があれば司法解剖により死因を確定します。自然死の場合も事件性がある場合も、遺体は自治体や社会福祉協議会などに引き取られます。遺体の引取り手続きや火葬、埋葬の手配は、自治体や社会福祉協議会が行うのが一般的です。
遺体の火葬や埋葬は、「墓地、埋葬等に関する法律」に則って行われます。
2-2. 病院で亡くなった場合
身寄りがない人が病院で亡くなった場合の手続きは、自宅で亡くなった場合とほとんど変わりません。ただし、自治体や社会福祉協議会などへの死亡の連絡は病院側が行います。
連絡を受けた自治体や社会福祉協議会は、遺体の引取り手続きや火葬手続きなどを行います。引き取った遺体は一定期間保管され、親族や相続人を探すこともあるでしょう。
病院で亡くなった身寄りがない人は行旅病人(こうりょびょうにん)とみなされ、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」が適用されて遺体の火葬や埋葬が行われます。
2-3. 外出先で亡くなった場合
身寄りがない人が外出先で亡くなった場合、発見した人が警察に通報します。外出先がある程度人通りのある場所であれば、早期発見につながるでしょう。
警察は、検視や所持品から身元の特定作業を行います。警察での対応が終わり次第、自治体や社会福祉協議会に遺体が引き渡されて遺体の火葬や埋葬が行われます。身元が分からなかった場合は、官報に情報が掲載されることになるでしょう。
身寄りがない人が外出先で亡くなった場合は、病院で亡くなった場合と同様に「行旅病人及行旅死亡人取扱法」が適用されます。
3. 身寄りのない人が死亡した場合に起こり得る問題
身寄りのない人が死亡した場合に起こり得る大きな問題として、葬儀・納骨・相続の3つが挙げられます。死後の手続きが希望に沿わない形で行われる可能性もあるでしょう。
以下では、身寄りのない人が死亡した場合にどのような問題が起こるのか、詳しく解説します。
3-1. 葬儀に関する問題
戸籍から親族が見つかった場合は、遺体の引き取りや葬儀を依頼します。しかし、葬儀には手間と金銭的な負担がかかるのが現実です。そのため、親族との関係が断絶しているケースでは遺体の引取りを拒否されることもめずらしくありません。
故人と長く付き合いがなかった親戚や知人などが葬儀を行う場合、下記の給付制度を利用できます。
葬祭費補助金制度
葬祭扶助制度
いずれも給付金を受け取るには申請が必要です。支給額は自治体によって異なります。
遺体の引取りや葬儀を行う親戚がいない場合は、自治体や社会福祉協議会が火葬の対応をしますが、基本的に葬儀は行われません。
3-2. 納骨に関する問題
身寄りのない人の遺骨は、自治体が一定期間保管します。自治体により保管期間は異なるものの、5年間程度が目安です。保管期間が過ぎると自治体の無縁塚(合葬墓)に納骨されます。親族から遺骨の引取りを拒否された場合も同様です。
無縁塚は複数の遺骨と埋葬されるお墓の形式で、定期的な法要が行われることはありません。納骨後に親族が遺骨を引き取りたいと申し出たとしても、個別に取り出すことは不可能です。
樹木葬や永代供養など希望する納骨方法や供養方法がある場合は、適切な形で遺志を伝える工夫が必要です。
3-3. 相続に関する問題
身寄りのない人の財産は、法定相続人がいなければ最終的に国庫に帰属します。親族との関係が断絶していても、法定相続人に該当すれば財産を受け取る権利があります。身寄りのない人は、意図しない相続や財産の使われ方が起こる可能性があるため注意しましょう。
ペットを飼っている場合、動物も財産と判断されて相続の対象となります。相続人がいない場合は、アニマルシェルターや保健所に引き取ってもらうことになります。
ただし、アニマルシェルターは収容できる数に限りがあるため、必ずしも引き取ってもらえるとは限りません。保健所に引き取られたペットは、収容期間が過ぎると動物愛護センターに移されます。
4. 身寄りのない人が生前にできる準備
身寄りのない人が死後の不安を軽減するには、生前にできる範囲で準備をしておくことが大切です。葬儀・納骨・相続の3つはトラブルにつながりやすいため、対策を講じておきましょう。
ここからは、身寄りのない人が生前にできる準備を紹介します。
4-1. 葬儀会社への事前相談・生前墓の購入
希望する葬儀・納骨の方法がある場合は、葬儀会社へ事前に相談しておくことが大切です。近年、葬儀のスタイルやお墓の在り方は多様化しています。納得のいく最期を迎えるために、希望を叶えてくれる葬儀会社を探しておきましょう。
葬儀の生前予約の他に、寿陵を検討する人も増えています。寿陵とは、生きているうちに建てるお墓や購入する納骨堂のことです。永代にわたり供養とお墓の管理を行ってくれる永代供養も人気です。
4-2. 専門家との契約の締結
死後に行わなければならない手続きはさまざまあります。身寄りがない人は親族が対応できないため、代わりに手続きをしてくれるサービスを利用するのがおすすめです。司法書士や行政書士に相談して、専門家との契約を締結しましょう。
死後の手続き代行に関連する主なサービスは、下記の通りです。
死後事務委任契約
財産管理等委任契約
任意後見制度
高齢者等終身サポートサービス
財産管理等委任契約・任意後見制度・高齢者等終身サポートサービスは、生前からサポートが受けられます。ただし、死後事務委任契約でできるのは、死後に発生する手続きに限られます。
4-3. 遺言書の作成
相続に関する問題が起こらないように、遺言書を作成しておきましょう。財産をどのように使いたいかを形にしておくことで、死後に意図しない相続をされずに済みます。
ただし、せっかく遺言書を作成しても、不備で無効になったり発見されずに意向が伝わらなかったりすることもあります。遺言書の効力を発揮できるように、適切な方法で作成して遺言書の存在を信頼できる人に伝えておくことが大切です。
まとめ
身寄りがない人の死後手続きには、警察や病院、自治体や社会福祉協議会などが関わります。身寄りがない人が死亡すると、葬儀・納骨・相続に関する問題が起こる可能性があるため、生前にできることは準備しておくと安心です。
いざというときに頼れる身寄りがない人が生前にできる準備には、葬儀会社への事前相談や専門家との契約の締結などがあります。生前からサポートを受けられるサービスもあるため、司法書士や行政書士に相談してみましょう。
納骨堂「了聞」は、生前予約にも対応しています。都内で生前予約ができる納骨堂を探している方は、お気軽にご相談ください。