身元引受人とは?必要なケース・役割・見つからない場合の対処法も

終活
2024.10.17
身元引受人とは?必要なケース・役割・見つからない場合の対処法も

この記事を書いた人

運営部主任 小林 雄志

葬儀・供養業界経験者。複数の霊園・納骨堂での勤務経験あり。
取得資格:終活コンシェルジュ

高齢者の場合、介護施設への入居時をはじめとしたさまざまな場面で「身元引受人」が必要となります。しかし、万が一身元引受人が必要となった際は、誰に頼めばよいか悩む方も多いのではないでしょうか。

身元引受人にはさまざまな役割があり、なってくれる人が必ず見つかるとは限りません。介護施設に入居する方は、身元引受人になってくれる人が見つからない場合の対策も考えておきましょう。

今回は身元引受人とはどのような人かを説明した上で、介護施設の入居時に設定する身元引受人の役割と条件、身元引受人がいない場合の対処法も解説します。

1. 身元引受人とは?

身元引受人とは、本人に何らかの問題が発生したときに、身柄を引き取る責任を有する人のことです。介護や医療、刑事施設においてなど、さまざまなシーンで身元引受人は必要となります。

ただし、身元引受人は法的な用語ではなく、法律などで役割や責任は明記されていません。身元引受人が負う役割や責任は、身元引受人を立てることを求める施設・組織側が定めています。

身元引受人を他人に依頼したり、設定したりする際は、施設・組織が定める取り決めをよく確認しましょう。

1-1. 身元引受人が必要となるケース

身元引受人が必要となるのは、主に下記のようなケースです。

●介護施設への入居時
介護施設への入居時に、介護施設側から身元引受人を立てることを求められます。高齢者の利用者が利用料金を支払えないときの立て替えや、利用者にかかわる問題発生時(退去・死亡含む)の対応などが、身元引受人の負う主な責任です。

●医療機関への入院時
医療機関への入院時に、医療機関側から身元引受人を立てることが求められます。医療機関が身元引受人を求める主な理由は、緊急時の連絡先や入院に必要な物品の準備、入院費用の確実な回収などです。

なお、医師法では「正当な理由がなければ診察を拒めない」とされているため、身元引受人を立てられないと入院できないわけではありません。
(出典:e-Gov 法令検索「医師法 」/https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000201

入院時に身元引受人を立てられない場合、多くのケースでは病院が何らかの対応を行って入院を許可します。

●賃貸物件への入居時(高齢者のみ)
高齢者が賃貸物件に入居するとき、身元引受人の設定が必要になるケースがあります。賃貸物件への入居時における身元引受人は、入居者に万が一のことがあったときに身柄を引き取る人のことです。

賃貸物件への入居時に身元引受人の設定を求められ、立てられなかった場合は、賃貸借契約を結ぶことができず入居ができない可能性もあります。

●逮捕・勾留後の釈放・保釈時
刑事施設では、逮捕・勾留後の釈放や保釈時に身元引受人が必要となります。刑事施設のケースにおける身元引受人の役割は、釈放・保釈された人が間違った行動をしないように監督することです。身元引受人がいない場合は、釈放・保釈が認められない可能性があります。

1-2. 身元引受人と身元保証人・連帯保証人・成年後見人の違い

介護施設においては、身元引受人だけでなく身元保証人・連帯保証人・成年後見人をつけることが必要となるケースもあります。

●身元保証人と身元引受人の違い
身元保証人とは、介護施設に入居した方の身元を保証する人のことです。入居者本人の施設・サービス利用でかかった費用などを、上限額の範囲内で支払う債務を負います。

また、介護施設が提供するケアプランや医療行為への同意、トラブル発生時の対応をするといった役割を担うことも身元保証人の特徴です。

身元保証人は本人の代わりに意思決定や金銭的な債務を負うことが多く、一方で身元引受人は身柄の引き取りを主な役割としています。

●連帯保証人と身元引受人の違い
連帯保証人とは、介護施設の入居者を原因とする損害の賠償責任を負う人のことです。施設料金の滞納や施設・他者に与えた損害など、入居者本人が発生させた損害について、連帯保証人は入居者本人に代わって支払う義務が生じます。

連帯保証人と身元引受人の違いは、連帯保証人は金銭面での債務が生じる人であり、身元引受人は主に身柄の引き取りを行う人であることです。

身元引受人は法律に責任などが明記されていないのに対し、連帯保証人は民法で明確に責任が明記されている点にも違いがあります。

●成年後見人と身元引受人の違い
成年後見人とは、高齢者が認知機能低下などによって適切な判断ができない場合に、本人に代わって財産管理や介護・入院契約などの手続き支援をする人のことです。

一方で、身元引受人はあくまでも身柄の引き取りなどを行う役割であり、本人の代理として財産管理などを行う権限は持ちません。

また、成年後見人は成年後見制度にもとづいており、成年後見人になるには家庭裁判所への申し立てなどの手続きが必要です。一方、身元引受人になる場合は特別な法的手続きは必要ありません。

2. 介護施設の入居時における身元引受人の役割

介護施設の入院時における身元引受人には、下記のような役割があります。

●緊急連絡先としての役割
身元引受人が入居者の緊急連絡先となり、入居者に何らかの問題が発生したときには施設に駆けつけて対応を行います。

●身柄を引き取る役割
入居者が介護施設を退去するときや、亡くなったときに、身元引受人が身柄を引き取ります。また、本人が亡くなったり認知症になったりした場合は、退去作業を身元引受人が行わなければなりません。

●退去時のサポートを行う役割
入居者が介護施設を退去するときに、私物の運び出しや居室の原状回復、未払いの施設料金の支払いなどを行います。

●ケアプランや治療方針の話し合いを行う役割
介護施設が提示するケアプランや治療方針を聞いて、内容に同意するかどうかを本人と話し合う役割です。本人が意思決定を下せない場合は、身元引受人が判断します。

身元引受人は、身柄の引き取りや施設料金の支払いをするなどの責任を持つため、金銭的負担や各種手続きの対応を迫られるリスクがあります。

介護施設に入居する高齢者の方は、身元引受人が負うリスクを理解した上で、引き受けてくれる方を探す必要があるでしょう。

3. 介護施設の入居時における身元引受人の条件

身元引受人を引き受けられる人の条件は、介護施設ごとに違いがあります。

一般的な身元引受人の条件は、入居者本人の家族や親族であることです。「緊急時に駆けつけられる距離に住んでいる方」という条件が加えられるケースもあります。

介護施設によっては、友人・知人であっても身元引受人になることが可能です。

また身元引受人の条件として、身元引受人の年齢や収入が求められる場合も少なくありません。入居者本人よりも身元引受人が高齢であったり、収入がほとんどなかったりすると、身元引受人の役割を果たせない可能性があるためです。

家族・親族や友人に身元引受人を引き受けてくれるよう依頼する前に、介護施設が定めている身元引受人の条件をしっかりと確認することがおすすめです。

4. 【高齢者向け】身元引受人がいない場合の対処法

身元引受人を引き受けてくれる人がいない場合は、下記の対処法を検討してみてください。

● 成年後見人がいれば入居できる介護施設を利用する
● 身元引受人の設定が不要な介護施設を利用する
● 保証会社に身元引受人の代行を依頼する

また、介護施設への入居予定がない方であっても、身元引受人がいなければ万が一の入院時や死亡時に身柄の引き取りをしてくれる人を指定できません。

身元引受人を探したり、葬儀会社に相談したりなど、生前にできる準備は手広く行ったほうがよいでしょう。

まとめ

身元引受人は、身柄を引き取る責任を持つ人のことです。介護施設における身元引受人は他にも、緊急連絡先や退去時のサポート、ケアプランなどの話し合いを行う役割があります。

介護施設への入居時は、基本的に身元引受人の設定が必要です。介護施設が定める身元引受人の条件を確認して、家族・親族や友人などに身元引受人を引き受けてもらえないか依頼しましょう。
身元引受人がいない場合にも、紹介した3つの方法で対処できます。身元引受人探しや葬儀会社探しなど、万が一に備える準備は、余裕があるときに進めておくことがおすすめです。

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